峯川龍:アーティストの世界観を映像で描く

元々ミュージシャンとして音楽業界に入り、現在はミュージックビデオやライブ映像をはじめ、幅広い映像制作に携わる映像ディレクターの峯川さん。長年にわたり様々なジャンルのアーティストやプロジェクトに関わり、映像を通して作品やライブの魅力を届けてきた。

今回のインタビューでは、映像制作の道に進んだきっかけや、ディレクターとして大切にしている考え方、制作で壁にぶつかったときやプレッシャーとの向き合い方など、様々な話を聞いてみた。


— この度はインタビューの機会をいただき、ありがとうございます!
まずはお仕事以外で、峯川さんご自身について少し自己紹介をお願いできますか?

こちらこそ貴重な機会をいただきありがとうございます!
生まれは東京で大学時代から楽器(ベース)を初めて、大学中退してからしばらくバンド活動を精力的にしていました。趣味は音楽やイラスト、映画など様々なアートに触れるのが好きで、一時期はライブや展示会、映画によく行ってました。あとは人とお酒を飲むのが大好きなので暇ができたらすぐ飲み行きます!

— 映像のお仕事をしたいと思うようになったきっかけは何でしたか?そこから実際に映像ディレクターになるまでの具体的なプロセスについて教えていただけますか?

はじめはバンド活動をしていく中で、レコーディングやミックスマスタリングができたりデザインができるメンバーがいて、自分も何かできないかと模索していました。そこで唯一映像に関しては外注していたので、いきなりMVはできなくても宣伝映像くらいは、作れる様になろうと思い編集からはじめたのがきっかけでした。その後自分が練習用でSNSにアップロードしていた映像を知り合いの監督やカメラマンの方が見て声をかけてもらい、現場に行く様になり今に至るという感じです!

— 映像のお仕事が中心となった今でも、ご自身で演奏されたり、バンドで活動されたりすることはありますか?

現在はもうありませんね。最後に組んでいたバンドが解散してからは1年ほどサポート業などしていましたがもうそれっきり弾いてないです。

— ビデオグラファーと映像ディレクターのお仕事はそれぞれ異なるスキルや視点が求められるのではないかと思いますが、ディレクターのお仕事をするうえで特に重要だと感じていることは何でしょうか?

自分の中でざっくりですが、ビデオグラファーとディレクターの違いというのはワンマンかチームかという点だと思っています。ディレクターは現場の規模感によりますが撮影、照明、制作、美術、ヘアメイク、スタイリングもっと細かく部署が別れている現場もあります。その全スタッフに自分がどういうものを作りたいかを事前になるべく細かく共有する必要がありますし、当日もスムーズに現場が動く様にスタッフはもちろん演者さんともコミュニケーションを取らないといけません。ライブ収録においてもカメラマンの方々にどういった画が欲しいかを具体的に共有しないと成り立たないと思います。

大前提企画力はあるに越したことはありませんが、支えてくれるスタッフとのコミュニケーションも大事だと思っています。対してビデオグラファーはそれを全て1人でしなければいけないので膨大な知識が必要だったり、クライアントワークも自分でこなしていかなければなりません。どちらも大変ですが向き不向きはあるのかなと思います。

— 映像ディレクターのお仕事を始めた初期の頃、一番苦労した課題は何でしたか?

始めた当初は現場にはよくいかせてもらっていたので都度先輩に教わり、立ち回りや機材について学べましたが、編集については誰かついて教えてもらえる機会なんてなかったので、とても苦労しました。なんなら今もですね (笑)。カット割りや、色、トランジションなどいろんなチュートリアルや他の方の作品を見まくって勉強したり、どうしてもわからない場合には現場で会った際に聞いたりしてました。

— 撮影の際に使用されている機材についても教えていただけますか?こだわって使われている機材や設定、また編集ソフトなどがあればぜひ伺いたいです。

機材については自分で所持しているのがSONY FX3とBlackmagic Pocket Cinema Camera6K(以後:BMPCC)です。MVにおいてはBMPCCの色味が好みなのと個人的にカラコレがしやすく、そちらをよく使っています。ただアイドルさんのMVを撮影する時には、時間短縮の点でオートフォーカスが効くFX3、FX6などのソニー機を使っています。

機材のこだわりというこだわりはあまりありませんが、撮影するアーティストのイメージに併せどんな色合いに持っていきたいかで機材を選んでいます。
ライブ収録においてはソニー機以外は基本使わないです。理由はやはり長時間撮影に一番適しているのとレンズの豊富さですね。Eマウント(ソニーの規格マウント)への変換が多くあるので他社レンズやシネマレンズをつけられるので飽きないです!

— クリエイティブな活動をしている多くの方々が、創作の壁や不安を感じる瞬間があると思います。峯川さんは制作作業で壁にぶつかった時、どのように乗り越えてきましたか?
また、振り返ってみると、キャリアの初期の頃と比べてその向き合い方に変化はありましたか?

とりあえず挑戦してみることですかね。頭の中で思い描いていたことが実際全然うまくいかないなんてことはあって、逆も然りでうまく行くかわからないけどやってみたら思った以上に良かったということもあります。失敗したら次に活かせますし。むしろそれが楽しいところでもあるのであまりネガティブには考えたことないです!初期の頃は全部自分で考えて悩んでましたが最近はできないことはお願いするスタンスです!やはり餅は餅屋と言った様に専門の方々にお願いした方がいいものを作れると思うので!

― どのプロジェクトも、アーティストのファンの期待とともに、多くのスタッフが現場に関わっていることにより、色々なプレッシャーがあるのではないかと思いますが、如何でしょうか?そういったプレッシャーは、特に、どのような点で感じることが多いしょうか?

自分自身とてもプレッシャーを感じやすいので、慣れていない環境というのに敏感ですね…特に初めてのアーティストの時は毎回緊張します(笑)。自分の考えた企画の段階から現場の雰囲気や完成した上がりが気に入らなかったらどうしようと常に思ってます。2回目以降は相手の好みやそもそもの距離感が縮まっているので幾分かマシですがやはり今でもそこは変わらないですね。

— これまでのキャリアの中で最も苦労された時期はいつごろでしたか?それをどのように乗り越えられましたか?

映像を初めて2、3年した頃でですかね。最初はいろんな人のMVの現場や収録カメラマンをしていて、ディレクター志望ではあったんですがディレクターは依頼がないと始まらないと思っていたので行動にもうつせずでした。周りからも”撮影部”(MV、ドラマの現場で撮影周りのみを担当する)の人と認知されていて、結局自分が何をしたいかわからなくなってしまってました。ただ周りのディレクターを見てやはり何か作品を作りたいと思いディレクター志望ということを色んな場所で口にしていたら、知り合いの方から仕事をいただいたりしてこなしていくうちに、ありがたいことに依頼も増えてきました!

— これまでのキャリアの中で、一番印象に残っているハプニングやエピソードがあればぜひ教えてください。

初めての外ロケ撮影の時に、自分が運転してた機材車と別にもう一台車を用意していたんですが、その車を運転する方が1時間くらいの寝坊をして、その後夜の街をいくつか回る予定だったんですが、1箇所目を撮り終えて2箇所目に移動した後レンズケースがないことに気づいて、1箇所目に置いてきてしまってたんですよね。
さらにその2箇所目に移動してる際にほんとは左折しちゃいけないところを曲がってしまい警察に止められたりして最終的に3時間くらい押して終わったことがあってハプニングだらけの撮影でした (笑)。

— いつか一緒にお仕事してみたい、憧れのアーティストはいますか?

凛として時雨さんです!高校生の頃からずっと好きで今でもライブに足を運んでます!バンド活動をしている頃も憧れていましたし、今この仕事になってからもいつかご一緒したいと強く思っています!

— 凛として時雨さんの一番好きな曲は何ですか?

これはとても難しい質問ですね (笑)。どれもとても好きなんですが強いて1曲あげるのであれば”moment A rhythm”です。7分ほどある長い曲なんですが不思議と聴き入ってむしろ物足りなく感じるほどです。空気感だったり展開が好きで、言葉では説明しづらいんですがどこか懐かしい感じもして、この曲を聴いてる時は全てを忘れられます。

— お仕事をされる中で、「ここだけは譲れない」と思っている部分はありますか?

自分の課題でもありますが、自分の色を出すということです。映像コンテンツがここまで主流になり映像を仕事にしている人が増えている中で自分にしか作れないものを追い求めてます。時間や予算都合で何か削らなければいけないとなった時にもこれが無くなったら月並みな作品になってしまう。そう言った演出を考えるのが好きですし、それがないと僕が作る意味がないと思っています。

RAY/plasma (2025/9/1 at 恵比寿LIQUIDROOM)

映像にセオリーはあっても正解はないと思っています。

— 目標や夢を実現するために、どんなプロセスとアプローチが必要だと思いますか?

小さなことでも発信することかなと思います。それこそあのアーティストが撮りたいというのも口に出さないと伝わらないですし、今はSNSがあるいい時代ですからこんなものが作れますとSNSに載せてアピールすることもできます。
あとはコミュニケーションだと思います。何かを作る上で気持ちよく一緒に歩みたいと誰しもが思いますから、どんなに実力や経験が豊富でも、そこが不足していると広がりにくいのかなと思います。

— 夢といえば、何か今の夢はありますか?

夢は海沿いにカフェを開いて生活することです!人が多いの苦手なので程よく人気のある街で、ただ暇なのも嫌なのでカフェを経営しながら過ごしていきたいです。

— お仕事ではライブ会場など、人の多い環境にいることも多いかと思いますが、そういった場ならあまり気にならないのでしょうか?それとも、ご自身なりの向き合い方や対処法があるのでしょうか?

よく言われますね (笑)。とても感覚的な話になるんですが、ライブ会場にいるみなさんはこれから始まるライブを楽しみに待っているいわば仲間のような感覚があるんですよね。全員の気持ちが合致しているし、プラスというかポジティブな空間なのでむしろ好きです。あと撮影という点においては柵の中だったり袖だったり物理的に人との距離が遠いっていうのもあります (笑)。

— 映像のお仕事を目指している方に、どんなアドバイスを送りたいですか?

映像にセオリーはあっても正解はないと思っています。自分の目で色んな作品を見て目を肥やしていって、自分の作りたい理想系を目指していれば自ずと形になるかと思います!

— 現在ここまでクリエイティブに活躍されている一番の理由は何だと思いますか?

自分のなかで心がけていることがアーティストに寄り添うことです。どこまでいっても音楽業界での映像は二次創作だと思っています。アーティストが表現したいことを映像に起こす、楽曲ありきのもの。その上で自分にしか出せない味を足してアーティストと一緒に映像を作り上げているからだと思います。


インタビュー・文:マズリナ・オルガ

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