YUTOさんは当初ただ音楽を作りたいとう想いを胸に音楽活動をスタートしましたが、その道はすぐに予想を超えて広がりました。メタルコアバンドEarthists.のギターボーカルとして、アジアやヨーロッパのステージで熱いパフォーマンスを繰り広げ、世界中で愛される存在となりました。同時に、プロデューサーとしても幅広いジャンルで音楽を手掛け、さまざまなアーティストと共にそのビジョンを形にしています。今回のインタビューでは、彼のキャリアの始まりから、楽曲制作に対するアプローチ、そして音楽業界で創造性を保ち続けることの大切さについて深く掘り下げていきます。
ー 子供の頃から音楽に興味がありましたか? また、その後、どのようにしてミュージシャンやバンド活動を始めることになったか、少し詳しい経緯を教えて頂けますか?
小さい時から家でずっと音楽がかかっているような家庭で…両親がL’Arc~en~Ciel、Eric Clapton、Guns N’ Roses をよく流していたんですよね。それで中学生の時にL’Arc~en~CielのTetsuyaさんみたいになりたくてベースを始めたのがきっかけでした。ベースを始めたって言っても本当に家でポロポロ引くだけだったんですけど(笑)。でもやっぱりそれだけじゃ面白くなかったので「曲を自分で作ってみたい!」とすぐに思い始めて、ベースを始めた1年後くらいにコードから曲が作れるようにギターを買ってもらって、そこからミュージシャンとして活動したいなぁと志すようになりました。
そして大学生の時にサークルでコピバンをやっていく中で、同時進行で曲作りをしてSNSに投稿したりしてたんですけど、ある日突然TwitterのDMでEarthists.のメンバーから加入のお誘いが来まして、それに二つ返事で「やってみたいです」と返答してそこから本格的にEarthists.のメンバーとしてのキャリアがスタートしました。

ー ミュージシャンになってみて、何か予想外だったことはありましたか? 音楽業界に入る前と後で、その業界に対する印象や考え方でどう変わりましたか?
すごい華やかで、何事もすんなり思うようにいくような世界だと勝手に思っていたんですけど、実際はもっと複雑なもので…ライブ1つするのにも多くの関係者の方が動いてくださって、曲をリリースするにも色々と準備を事前にしなければいけないし、本当に色々な人たちの熱い想いと情熱で成り立っている業界だなとすごく感じました。とはいえどの業界もそうですが、愛とリスペクトがあるからこそ、音楽っていう素晴らしいコンテンツを世の中に発信できているんだなーとヒシヒシと感じましたね。一口に「複雑なもの」っていう表現だと適切ではないかもしれないですが、人生の中で何にも変え難い経験も得られるし、音楽やってなかったら出会ってなかったような人たちとも出会えるし、音楽という好きなことに対して熱い想いを注げる素晴らしいフィールドだと思ってます。
ー YUTOさんはEarthists.のギターボーカルですが、それにとどまらず、作歌作編曲、レコーディングといった制作側の作業も行っているものと思います。そういった制作面にも携わるようになったのは何かきっかけがありますか?
元々バンドから音楽を始めたわけではなく、楽器を始めてからすぐに作曲をしていたので、バンド活動に対して憧れはありつつも作曲家として活躍したいという想いが最初は強かったです。ただ、そんな中で実際に仕事として作曲の依頼をいただくようになったのがバンドでの活動きっかけだったので、Earthists.での活動から派生して本格的に「作曲家」としての活動がスタートしたなと思っています。

ー Earthists.はHyper Metal・メタルコアバンドですが、YUTOさんはポップなど他のジャンルのアーティストのプロデュース、ミキシング、マスタリングなどもされています。異なるジャンルでの制作における違いや、特に感じた難しさなどあれば教えていただけますか? また、そういった異なるジャンルの制作がご自身のバンドの音楽にも何か影響を与えていると思いますか?
ヘヴィミュージックだとやっぱり激しいギターのサウンドをどういう形で生かすかとか、バンドサウンドとそれ以外の要素をどうやってどこまで調和させるかというのに頭を使うんですけど、ポップスとかだとやっぱり「歌唱」が一番主役なので、そこありきでどういうアレンジメントと展開を付与すればいいかっていうところに注力してます。とはいえ、ヘヴィミュージックでも歌のアグレッシブさとかエモーショナルさが必要不可欠なので、大枠で言うと実はそんなに違いはないのかな?と最近思っています。異なるジャンルでも主役が絶対に居るので、それをどう生かすかというのが一番難しいところですね。
異なるジャンルでの制作はやっぱり相互に大きな影響があります。そのジャンルでやっていないようなアプローチをミックスさせることもできるようになりますし、その結果自分が作る独自のサウンドを生み出すことができますし。あとはやはり「歌」に対するこだわりがどんどん広がってきたと自分的には感じています。

ー 楽曲が「完成した」と感じる瞬間について教えていただけますか?そもそも、音楽において本当に「完成」というものは存在するのでしょうか?
楽曲提供の場合だと、クライアントさんの要望と自分のサウンドが合致してこれでOK!ってなった時が完成ですね。バンドの場合だとメンバーとの齟齬なく思うような楽曲が作れたらそれで終わりかな。ただ…..思想的な観点で言うと完成はないです(笑)変な話かもしれないですが、多分死ぬまで「完成した!もう悔いはない!」ってなることはないんじゃないかと思います。ちょっと語弊があるかもしれないですが。楽曲制作で探求が尽きることがまずないので、リリースした後も「ここはこういうアプローチができたんじゃ…?」っていう一人反省会をすることもあります。
でもこれは別に悪いことではないと思っていて、だからこそ良いものを作って世の中に発信し続けられているかなと思っています。「完成」したらそれこそキャリアが終わってしまうような感じがしてしまいますね。
ー 今までのキャリアの中で、一番印象に残っている瞬間はいつですか?

自分が作った音楽が初めてCDとして全国流通した時ですね。1st AlbumのDreamscapeで各所レコードショップにおいてもらえて、例えばタワレコとかで自分達のCDがズラって並んでいて我ながら感動した記憶が今も鮮明に残っています。しかも1stからアメリカのレーベルと契約していたので、海外でもCDが刷られて店頭に置いてあったり….Vans Warped Tourがあったときには会場のレーベルブースでCDが並んでいる画像が上がっていたりして、かなり嬉しかったです。
後はバンドでの海外ツアーかな。初めて行った国が中国だったんですけど、その後は台湾、韓国、ベトナム、タイ、シンガポール、ヨーロッパに行ったりしました。まず当たり前ですが、色んな局面で感じる文化の違いとお客さんのレスポンスの違い。後は海を越えて自分達の音楽を好きでいてくれている人がこんなにいるんだ…というので感動したことですね。ツアーしていく中で得られる良いことも困難も全て尊い人生経験になっていると思います。
ー クリエイティブな活動をしている多くの方々が、創作の壁や不安を感じる瞬間があると思います。YUTOさんはバンド活動や制作作業で壁にぶつかった時、どのように乗り越えてきましたか? また、キャリアの初期の頃と比べてその向き合い方に変化はありましたか?
いわゆるスランプみたいなことは一回も経験したことなくて…壁や不安を感じたことがないんです。全ての工程を楽しんでやっているので、もしかしたら自然とそういうものも無意識に乗り越えてきてるのかもしれないですが。そっけない回答ですみません(笑)ただ、もしそういう局面に陥ってしまった人にできるアドバイスとしては、一旦別のことをしてリフレッシュするに限るかな…お風呂入ったり、コーヒー好きならコーヒを豆から挽いて香りを楽しんでみたり。些細なことでも良いんですけど、自分がリラックスできるようなことに意識を向けるのが一番だと思います。

自分の中で音楽をやること自体が、ご飯を食べる、寝るとかみたいなものと同等なんです。
クリエイティブになることは生きていくのに必要不可欠な行動だと感じています。
ー 音楽活動を通じて、自分自身が成長したと感じる瞬間はどんなときでしょうか?
楽曲制作の依頼が増えてきたことと、Earthists.というバンドが徐々に大きくなってきているなと実感した時ですね。ありがたいことに双方でどんどん成長していっているなと日々感じてます。

ー 今までのキャリアで一番苦労した時期はいつですか。そしてそれをどうやって乗り越えましたか?
バンドを始めたての頃が一番大変でした。それまでがっつりやったことなかったのと、まずお客さんを目の前にして曲をステージ上で演奏するということが自分の中では考えもしなかったことなので。コピバンではサークル内の友達とワイワイ楽しみながらやるスタンスだったので、当然だけど意識の持って行き方が分からずかなり苦労しました。でもそこは場数を踏むしかないので、自然とプロの演奏家/バンドマンとしてのノウハウはついていったかなと思います。まだ道半ばですが。
ー YUTOさんご自身は、目標や夢を達成するためにどのようなプロセスを踏むことが大事だと思われますか?
とにかく続けること。自分のスキルを継続的に磨いたり人とのつながりを広げていくことはしつつも、後はチャンスが巡ってくるのを待つのみだと思います。良いものを発信しても報われない時は多いと思うんですけど、そこでストップしたら終了だと思うので、自分を信じてやり続けるのみですね。いつか絶対「そのタイミング」は来ると思います。

ー 夢と言えば、何か今の夢はありますか?
作曲家としては、後世に語り継がれるような名曲を絶対一つ作ること。バンドではホールクラスのでかい会場でワンマンソールドさせること!でも達成したらまた何か野望が生まれてくると思うので、現時点での夢ですね。
ー YUTOさんが音楽を通じて最も伝えたいメッセージや想いは何ですか?

人生は思ったよりも短いので、全力で酸いも甘いも経験して、全力で謳歌して最高の生涯だったと振り返りながら還れたら最高じゃん、っていうのが一番のメッセージです。言葉にするとなんかちょっと恥ずいですが(笑)そんな想いがいつも自分の中にあります。
ー 最後の質問ですが、現在クリエイティブにご活躍されている一番の理由は何だと思われますか?
自分の中で音楽をやること自体が、ご飯を食べる、寝るとかみたいなものと同等なんです。クリエイティブになることは生きていくのに必要不可欠な行動だと感じています。また、自分が作る音楽を好きでいてくれて応援してくれたり、お仕事を依頼してくれる人たちへのリスペクト、そして音楽という媒体を通じて何かを生み出すことが自分にとって凄い「生きている」という感じがするので、それらがクリエイティブでいることの理由です。
インタビュー・文:Mazlina Olga
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